夜の闇に染められた砂を朝日が白く照らし、風は砂に美しい自然の足跡を刻み、西へと傾いた太陽はまた砂丘を赤く染めていく……。ぬけるような空の下、柔らかな丸みのある砂山が彼方の地平線まで続いていく砂漠の景色は、時間を忘れて眺めていたくなる。チュニジア南部を指す“Le Grand Sud(ル・グランド・スッド)”は、直訳すると広大なる南という意味だが、そこには別のニュアンスも込められている。東をリビアに、西をアルジェリアに接するこの地域は、アフリカ大陸のおよそ3分の1を占めるサハラ砂漠の入口であるとともに、チュニジアの人々にとって誇り高き故郷でもあるのだ。その理由は、一粒ずつがきめ細かく柔らかな手触りのあるこの砂漠を訪れてみればきっと分かる。歴史と文化が幾重にも織り重なってきたこの砂漠には、五感のすべてを使って味わうべき体験が待っている。